2007-04-27

ノーテンキ

計見一雄の「脳と人間」を読んでいると、私も精神科の医者が勤まるのではないかとの錯覚に陥る。精神分裂病(統合失調症)のさまざまな事例を読んでいて、どこにでもある話だという気がしてくるから不思議だ。計見が書いているように、現代という時代がこの病気に冒されつつあるのかもしれない。
ところで、彼が引用するリベの「脳は運動器官だ」という主張は、大脳皮質前頭前野での運動スキームの形成に関する論文で、行為の意志的決定は用意された行動スキームを、運動野へつなげて実行に移すか否かの選択によるとあるそうだ。そうして、その選択はスキームの<[非選択(Veto・・拒否)]>によるとある。非選択が自由意志を支えるものだという論文らしい。
すなわち、「継続する意志とは継続を止めることを選択しない意志」ということになる。努力するのではなくて、努力することを止めることを否定するという形式が意志の働きとして原型だというのである。
そして、彼が強調するようにここでなにより重要なのは「やろうと思えばできた」というところだ。つまり、ある行動計画はできており、道徳的意識か、規範意識か、実現可能性か等々いずれかの理由により選択されなかったというのだ。常に運動の中ではカウンタープランと引き比べて現実の行動の選択がなされているということを言っている。
そして、ポジティブシンキングは大流行だがカウンタープランを欠いた思考はただのノーテンキだといっている。